今回のコラムは前回コラムの続編であり、私が県職員時代に経験した既存事業のスクラップ&ビルド事例の2つ目である“佐賀県立学校情報システム&ネットワーク再構築事業の後編になります。

前編ではスクラップ編として、

  1. 自分の担当業務ではない他課の業務ではあるが、自分の業務との有機的関連性・連続性があり、興味がある分野でもある他の課(教育情報課)の業務領域まで視野を広め、システム&ネットワーク全体を統合した形で“視える化”したデザインを予め描いていたコト
  2. システム&ネットワークを統合したデザイン予めを描き分析していた結果、全体が統一的に最適化されていない心象を強く持ったため、総務課の自分を情報課と兼務にした方が良い旨幹部に提案したコト

を述べていました。

後編では、ビルド(=再構築)編として、不正アクセス事件が覚知し大々的にメディアで全国ニュースとして報じられた結果、再発防止策の検討及びシステム&ネットワーク全体の再構築したプロセスについてご紹介します。

【不正アクセス発生と被疑者勾留した旨の警視庁からの第一報】

私の提案から数ヶ月後、警視庁サイバー犯罪対策室から内々で佐賀県教育庁に連絡があり、県のシステム&ネットワークに不正アクセスされている嫌疑があるため捜査中であるコトや、操作段階で最高レベルに秘匿性を確保する中で、

1.不正アクセスされた部分の原因究明

2.再発防止のための応急措置

3.遠くない先の被疑者逮捕を想定したマスコミ対応策

4.抜本的なシステム&ネットワーク再構築の検討

etcが、教育総務課と教育情報課で協議が重ねられました。

そしてマスコミが不正アクセス事件を全国ニュースで大々的に報じた前後で、以下の❶~❹に私は主導的に関わることになりました(ネット記事参照

【❶特別対策チームの設置】

通常業務に加え突発的に上述1.〜4.等を同時並行で短期間で協議する必要があるため、総務課と情報課の数人が選出され、また知事部局からIT分野専門の幹部を教育委員会に招聘し特別対策室が設けられました。

巨大な情報システム&ネットワークの全体構造を予め可視化し、全体最適化がなされていないコトを予め提言していた私もチームの一員となりました。

【❷再発防止のための応急措置】

不正アクセスの手口は、48県立学校毎に設定されている“管理者アカウント”の漏洩によるものだと推察されていました(結果警視庁の発表及び第三者委員会の諮問結果もそう結論付けていました)

そこで学校現場に不正アクセスが行われていることを知られることなく、これまで学校毎に管理していた管理者アカウントを一元管理する運用ルールを応急的に設計しました(運用ルール案は私が作成しました)

その運用ルールとは、学校現場が管理者アカウントを用いて行う各種デバイス(学習用タブレット端末、電子黒板、プリンタetc)やソフトウェアの設定や操作(新たな学習教材ソフトのインストール等)を行う場合、全てを冨岡に申請→統一的な審査基準を経て許可し管理する方法でした(その業務で冨岡の業務は一時的に激増しました)

【❸第三者委員会の設置と諮問】

警視庁の捜査も進み起訴に足りる証拠が集まってきたタイミングで、警視庁はマスコミへの公表を行いました(公表当日の県庁は蜂の巣を突いたように多くのマスコミが県教育委員会に詰め掛けました)

そして県民に対する説明責任を果たすため有識者による第三者委員会を設置し、事件の原因究明及びシステム&ネットワークの抜本的な見直しの提言を受けました(Facebook投稿有り

【❹再構築のためのプロジェクトマネージャーの調達】

第三者委員会からの提言を受け、教育情報システム&ネットワークの再構築を進めるにあたり、外部からプロジェクトマネージャーを調達することになりました(Facebook投稿有り

⑴不正アクセスされたシステム&ネットワークの全体構造の把握

⑵警視庁からの第一報とその後のサイバー犯罪対策室担当者との頻繁なやり取り

⑶マスコミ公表前の各種応急措置の立案

  1. 第三者委員会の提言内容

これら⑴〜⑷全てに主導的に関わり内容を熟知していた私は、プロジェクトマネージャー調達の仕様書を作成しました。

外部からプロジェクトマネージャーが調達されたことを見届けた私は次の職場に異動したため、このスクラップ&ビルドのプロジェクトから離れましたが、この事案、そして以前のコラムで記した商工会館の商工ビル移転プロジェクトやボクシング界のスクラップ&ビルドのプロジェクトには多くの共通点があります。

詳細は次回のコラムで述べますが、要約すると共通点は以下の5点です。

1.いずれの事案もメディアで報じられるような大規模プロジェクトであったこと

2.予めプロジェクトに係る大量な情報を整理・集約し“視える化”していたこと

3.視える化した結果視えた最適化されていない部分を予め上司・幹部に改善要請・改善提案をしていたこと

4.改善要請・改善提案したにも関わらず看過した結果大騒動になり、結果的に経営管理者側の判断にミスリードがあったこと

5.そして一人の地方公務員でも、条件が整えば大掛かりな事務事業等のスクラップ&ビルドが可能であるということです。

次回は特に5.の部分にフォーカスしたコラムを認(したため)る予定です。