情報化社会の進展により住民ニーズは更に多様化していく一方、高齢化による公的支出は増大し少子化による労働力人口は減少し税収が減っていくことは確実だと思います。

このような外的要因により行政需要の変化・拡大が想定される一方、役所が割ける人的・財政的リソースは減少し、職員1人1人の業務負荷は増してくるばかりであり、既存事業の見直しや廃止(=スクラップ)を実施し、より効果的な新たな政策を創造(=ビルド)することが必要不可欠だとも思っています。

【スクラップ&ビルド】というテーマの過去2回のコラムでは、地方公務員時代に経験した既存事業のスクラップ&ビルドした具体例をご紹介することで、古く陳腐化した事業や仕組み等を見直し、時代の変化へ対応していくことの大切さをお伝えしています。

前回の商工会館を商工ビルに移転するスクラップ&ビルド事業に続き、今回は佐賀県立学校の巨大な情報システム&ネットワークをスクラップ&ビルドした取組についてご紹介していきます。

【佐賀県立学校情報システム&ネットワーク再構築事業の概要】

佐賀県内にある48の公立学校(当時)は、全国に先駆け平成26年(2014年)に生徒全員にタブレット端末を配布する事業を開始しました。

教室へ設置する電子黒板の高い普及率と言い、当時の佐賀県庁は全国で1番ICT利活用教育が進展している自治体だと言っても過言ではありませんでした。

【スクラップ編】

私は平成27年に、巨大な情報システム&ネットワークシステム全体の構成要素の中の1つである48県立学校に設置されているサーバーの保守業務の担当になりました。

とは言っても、サーバー保守の業務は私にとってはほんの片手間の業務であり、私の業務量の9割は、市町村立学校(=いわゆる公立小中学校)の施設整備や県立高校の産業教育設備(家庭科の備品や農業高校・商業高校・工業高校の備品など)に係る予算調整業務でした。

サーバー保守が片手間の業務であったにも関わらず私は、佐賀県教育行政の先進的なICT利活用教育に興味があったので、自分の担当業務領域外にもアンテナを張っていました。

情報システム&ネットワーク全体の構成要素はハード面として担当しているサーバー保守の他にも、端末側には

❶生徒各人が情報するタブレット端末

❷教師が使用する教務・校務用パソコン

❸電子黒板

などがありました。

(※これら端末側のことを通常“クライアント”と言い、通常のネットワークはクライアントとサーバーを繋ぐ形式が一般的です【これをクライアントサーバーシステムと言います】)

また、❹48公立学校のサーバー全体を統括し監視するシステムや、クライアントとサーバーを繋ぐネットワークにも3本の有線の公共的ネットワークが存在しました。

ソフト面では、校務処理の効率化を図るため教師と生徒や保護者が共有できる“❺グループウェア”が存在し、また、生徒のタブレット端末や電子黒板に投影するための❻デジタル教材もありました。

ちなみに私が所属している教育総務課は、県立学校48校に設置されているサーバーの保守を含む県立学校や市町村立学校の新設や改修、保守等、いわゆる県内学校施設をハード面全般の予算措置を行う部署であり、教育情報システム&ネットワーク構成要素である上述❶〜❻は教育情報課の業務領域でした(両課の業務領域は詳細情報はココをクリックすると確認できます)

今回のコラムの結論として皆様にお伝えしたい点は以下の2点です。

⑴ 自分の担当課の業務領域では無いにも関わらず、興味・関心を持って上述❶〜❻に関する大量な情報を収集し、脳内に投影されるグラフィカルなイメージを“視える”形式でデザインをしていたという点

⑵ デザインしていたことが後に発生する不正アクセス事件後の迅速な対応に寄与することとなった点。

不正アクセスが発覚する数ヶ月前、教育総務課だった私は所属長である教育総務課長及び教育情報課長(当時は副教育長も兼務)に対して“とある”提案をしました。

その提案内容は、『自分の担当業務以外の領域で上述❶〜❻のとおり佐賀県立学校の情報システム&ネットワークの全体概要を把握し分析してみたが、全体が最適化されていない心象を強く持っています。ついては総務課の私を情報課職員として兼務させた方がシステム&ネットワーク全体が最適化されると思う』旨、公務員としては異例の兼務提案です(※結果兼務提案は却下され不正アクセス事件が発生。後編に続く)